肉の塊

初夏だ。
扇風機からはぬるい風が吐き出され、本当はエアコンを付けたいのに金がないから余り涼しくもないそれに惰性で当たっている。

去年の今頃から6キロも無駄な肉がついた体に耐えられない。
夜中に冷蔵庫の中を漁ってありったけの食料を食い散らかしてしまうのだ。
贅沢な肉の塊となった私は最早存在する意味などない。
チューブにこそ繋がれていないがただただ生かされている植物人間の様だ。
どうしたらいいのかわからないという時期はとっくに過ぎた。もうどうしようもないのだ。

26歳になるが一度も仕事を履歴書に書ける期間働いたことがない。
いつも都合が悪くなると「死んだ」事にして人間関係や仕事をトンズラしてきた。
合計自分を何回殺してるのか分からない。

先日仕事先の客とトラブルになり身の危険を感じたので辞めてしまった。
そいつは子供の書いた不細工な絵の様な見た目をしていた。
私は何度も頭の中でそいつを詰り殺したが地位も名誉もあるやつだったので何でも持ってる悪魔VS何もない悪魔の地獄の戦いになると思って元々存在しなかったことにした。
時々「君を悪から守ってあげる」という厄介な奴が現れる度に自分の隙だらけさにうんざりする。
しかし大きく分類すればそいつらと私は同じ世界の住人なのだ。
悪い奴らの世界を守る悪い奴らもヒーローなのか?

戻りたい過去なんてなく進みたい未来もなくただただこの怠惰な毎日が出来れば一生続きますようにと願うばかりである。

なんてね。